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婚姻費用とは?

結婚生活を送るうえで必ずかかる生活費のこと

結婚生活を送るうえで必ずかかる生活費のこと

婚姻費用とは、結婚生活を送るうえで必要な生活費のことで、具体的には住居費、食費、衣料費、養育費、医療費、交際費、娯楽費などがそれにあたります。
夫婦には、相互扶助義務の観点から、婚姻費用を分担し合う義務があり、婚姻関係が続く限り義務を負うことになります。
金額は、内訳に関係なく、双方の収入(所得)と子供の数、年齢等により、算定された金額により定められます(算定表方式)。就労していなくても、特別就労困難な事情がない限り、賃金センサス等による平均的な収入額があるとみなされます。

夫婦関係が破綻していても婚姻費用は分担

かっては、破綻して相互扶助関係にない婚姻関係には、婚姻費用を払う義務はないのではないかと議論された時代もありましたが(先例も存在した)、現在は、婚姻関係が続く限り婚姻費用の分担の義務は続くものとして、夫婦関係が破綻していてもそれは分担させるとなっています。
つまり、夫婦関係に亀裂が入っており、その修復のために別居している場合、また離婚を前提に別居している場合でも婚姻費用は分担しなければいけないというわけです。

婚姻費用請求権の発生時期

仮に、夫婦が別居した場合、収入の多い方が少ない方に経済的扶助をする義務が生じます。子供を引き取った側にはその負担も考慮され、他方側においては生活補助的扶助が履行されない分減額されることになります。
婚姻が終了すれば義務は生じません。養育費に変わります。
支払い義務の発生時期は、実務上、婚姻費用分担調停申立後というのが、多くの取り扱いですが(現在の福岡家庭裁判所の取り扱い、例外として、内容証明郵便で請求したことを証明したときはその時から、但しメールによる請求は認めていませんが、理論上客観的な意思表示が証明されれば同じ扱いでいいと思いますが、その内容が明確である必要があります)、大審院判例(大判明34.10.3・同37.7.18・同昭13.6.30)は請求時まで遡ってできるとされていたものがあり、最高裁判所も、家庭裁判所が婚姻費用の分担額を決定するに当たり、過去に遡って、その額を形成決定することが許されない理由はない、としたものもあります(最高裁判所大法廷昭和37年(ク)第243号事件昭昭和40年6月30日判決)。学説も、要扶養時から認められるというものもありますが、実務上は、家裁の審判でも、要扶養時以後、請求時以後そして調停審判申立以後しか認めないもの等に分かれていました。
時効について、扶養債権を、定期給付債権として、請求可能な時から時効にかかるという考えもあり、5年以内という限定も考えられます(援用を条件とする)。

別居の原因を作った側からも請求できる?

不貞配偶者のみ不可

不貞配偶者のみ不可

上記のように夫婦関係の破綻と婚姻費用の分担の義務は関係ないわけですから、別居中の相手方に対して婚姻費用を請求することができます。婚姻費用には夫婦間の扶助費用と子供の監護費用が含まれます。
しかし、婚姻費用分担請求事件において、請求者に破綻原因としての不貞行為が認定される場合、相手方は、子供の養育費相当分に限って負担義務が認められ、請求者分の費用は負担する必要がない、というのが最高裁判所の見解であり(平成17年6月9日決定・原審福岡高等裁判所宮崎支部平成17年3月15日 決定)一般的な先例です(大阪高裁平成28.3.17決定は、原審の不貞行為とは認められないとの判断による審判を変更して、同旨の決定を下しています(東京高等裁判所昭和58年12月16日決定、東京高等裁判所昭和42年9月8日決定等同旨)。なお、その根拠は信義則ないし権利濫用ですから、具体的な事情によって、請求者分の費用分担を認めている先例もありますし(札幌高裁昭和50.6.30)、上掲の最高裁判所の決定も事例決定の範囲です)。

これに対し、一度、婚姻費用の分担額が調停において定められた後で、相手方が、不貞の相手方との間に子が出来たとして、事情変更による婚姻費用の分担額の変更(減額)を申立てた事件で、原審(名古屋家裁)は、これを認めると不貞行為の助長・追認となるとの理由で申立を却下しましたが、抗告審(名古屋高裁)は、不貞の相手方との間の子の扶養を重視して、原則通り、婚費分担額の減額を認めました。夫婦間の倫理に基づく権利濫用は不貞の子であってもその福祉は保護されるべきという意味で高裁判断は妥当であると思慮されます。

婚姻費用の調停・相手方が婚姻費用の支払いに応じない場合

別居中、相手に婚姻費用を請求しても支払いに応じない場合があります。
こうした場合には家庭裁判所に“婚姻費用の分担請求調停”を申し立てて婚姻費用を請求することができます。合意が存在しない婚姻費用は、調停を申し立てた時(あるいは内容証明郵便で請求した時)からしか認められませんので、支払われなくなったら、直ちに申立をすべきです。ただ、協議書等により合意の事実と内容が証明できれば、その合意を為した時から請求できます。
婚姻費用の申立は、離婚調停と同時に申し立てることがよくあります。相手が、離婚ないし条件を争う場合には、婚姻費用は養育費より低額という観点から、解決が早まるケースも少なくないからです。
この時、双方の収入(所得)と子供の数、年齢等により、算定された金額となりますが、合意によれば、異なった金額で成立します。
もし調停で合意が成立しない場合には審判に移行し、算定表通りの金額で審判が為される強制力が付されることになり、支払われない場合には強制執行(給与差押え等)が為されることになります。


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